於紅谷

この演目は石見銀山に伝わる物語を元に創作された神楽です。間歩頭である於紅孫右衛門は、銀の採掘に長け人望も集めていた。このことを妬む、同じく間歩頭である吉田与三右衛門、藤佐衛門の兄弟は孫右衛門を谷に誘い出し殺してしまう。日頃より孫右衛門を慕っていたお高は、彼の死を悲しみ嘆いた。その悲しみは、次第に与三右衛門達への憎悪へと変わり孫右衛門の敵討ちを決意する。しかし、女一人では敵うはずもなかった。本懐を遂げることができなかったお高は、無念の思いの中、自害してしまう。すると、その募らせた憎しみや恨みは怨念隣、暗黒の雲を棚引かせ、ついに、お高は竜蛇へと化けてします。銀山の谷々は、黒雲に覆われ災いが頻繁に起こるようになり、人々は嘆いた。これを見かねた山の神である大山津見命は竜蛇を退治し、お高の怨念を祓い、孫右衛門の御霊を土山津見命を讃え、お高と共に祀った。そしてその谷の名前を「於紅谷」と名付け孫右衛門の功績を讃えた。

(2017白銀の舞 大屋神楽社中)